トロントラプターズの歴史と主な所属選手

 

トロント・ラプターズは、NBA(北米プロバスケットボール協会)において、現在唯一アメリカ国外のカナダに本拠地を置くチームとして、独自の地位を築き上げてきました。

1995年の創設から現在に至るまで、チームは浮き沈みを経験しながらも、2019年の悲願の初優勝を経て、今やリーグ屈指の人気と実力を兼ね備えたフランチャイズへと成長しました。

本稿では、そんなラプターズの激動の歴史と、チームを支えてきた伝説的な選手たちについて詳しく解説します。

チームの誕生と黎明期(1995年 – 1998年)

トロント・ラプターズは、1995年にNBAのカナダ拡大計画の一環として、バンクーバー・グリズリーズ(現メンフィス・グリズリーズ)と共に誕生しました。

チーム名の「ラプターズ」は、当時大ヒットしていた映画『ジュラシック・パーク』の影響もあり、一般公募の中から選ばれたものです。

創設当初のラプターズは、典型的なエクスパンション・チーム(新設チーム)の苦労を味わいました。

最初のシーズン(1995-96)は21勝61敗という成績でしたが、初代エースのデイモン・スタウダマイアー(通称「マイティ・マウス」)が新人王を受賞するなど、明るい兆しも見えていました。

しかし、1990年代後半はプレーオフ進出には程遠く、カナダでのバスケットボール人気の定着が模索されていた時期でした。

 

 

「ヴィンサニティ」の到来と飛躍(1998年 – 2004年)

チームの運命を大きく変えたのは、1998年のドラフトでした。

ラプターズは、ノースカロライナ大学のヴィンス・カーターを獲得します。

カーターはその驚異的な身体能力と華麗なダンクで瞬く間にスターとなり、カナダ全土にバスケットボールブームを巻き起こしました。

2000年のスラムダンクコンテストで見せた伝説的なパフォーマンスは、ラプターズの名前を世界中に知らしめました。

 

 

2001年には、カーターと従兄弟のトレイシー・マグレディ(短期間の在籍でしたが)の活躍もあり、チーム史上初めてプレーオフでシリーズ勝利を挙げます。

カンファレンス準決勝ではアレン・アイバーソン率いるフィラデルフィア・76ersと死闘を演じ、最終戦のラストショットが外れるまで勝敗が分からない激戦を繰り広げました。

この時期、ラプターズは「最もクールなチーム」の一つとして認知されるようになりました。

 

 

クリス・ボッシュの時代と再建(2004年 – 2010年)

ヴィンス・カーターがトレードで去った後、チームの柱となったのが2003年ドラフト4位指名のクリス・ボッシュでした。

ボッシュは細身ながら卓越したスキルとリーダーシップを発揮し、毎シーズン20得点・10リバウンドを期待できるリーグ屈指のパワーフォワードへと成長しました。

2006-07シーズンには、NBA史上初めてヨーロッパ出身選手としてドラフト1位指名を受けたアンドレア・バルニャーニも加わり、初のディビジョン優勝を果たします。

しかし、プレーオフでは上位進出を阻まれる年が続き、2010年にボッシュがマイアミ・ヒートへ移籍したことで、チームは再び大きな転換期を迎えることとなりました。

「We The North」:デローザンとローリーの黄金期(2012年 – 2018年)

2010年代に入り、チームはカイル・ローリーとデマー・デローザンという最高のバックコートコンビを中心に黄金期を迎えます。

2013年にマサイ・ウジリがフロントのトップに就任すると、チーム文化は一変しました。

「We The North(我ら北の勢力)」というスローガンの下、結束力を高めたラプターズは、東地区の強豪としての地位を確立しました。

 

 

デローザンの圧倒的な得点力と、ローリーの泥臭く情熱的なプレーはファンの心を掴み、チームは5年連続で50勝以上を記録するなど、レギュラーシーズンでは無類の強さを誇りました。

しかし、プレーオフでは当時全盛期だったレブロン・ジェームズ率いるキャバリアーズの壁を崩せず、あと一歩でファイナル進出を逃すシーズンが続きました。

2019年:奇跡の初優勝とカワイ・レナード

2018年の夏、マサイ・ウジリは最大の賭けに出ます。

チームの象徴だったデローザンを放出し、サンアントニオ・スパーズからカワイ・レナードを獲得したのです。

この決断は地元ファンに衝撃を与えましたが、結果として伝説のシーズンを生むことになりました。

 

 

2018-19シーズンのプレーオフ、レナードは「歴史上最も圧倒的な個人パフォーマンス」の一つを見せました。

準決勝の76ers戦、第7戦の終了間際に放たれた「4回跳ねてネットに吸い込まれたショット(The Shot)」は、NBA史に残る名場面です。

ファイナルでは王者ゴールデンステイト・ウォリアーズを4勝2敗で破り、カナダのチームとして史上初めてNBAチャンピオンに輝きました。

カワイ・レナードはファイナルMVPに選ばれ、トロントの街は狂喜乱舞しました。

ポスト優勝時代と新星スコッティ・バーンズ(2021年 – )

優勝後、レナードやローリー、シアカムといった功労者たちが次々とチームを去りましたが、ラプターズは育成力とスカウティングで競争力を維持しました。

2021年に全体4位で指名されたスコッティ・バーンズは、初年度に新人王を獲得し、現在はチームの新たな顔として君臨しています。

 

 

2024年から2025年にかけては、地元カナダ出身のスター、RJ・バレットや才能溢れるガードのイマニュエル・クイックリー、さらには実力派のブランドン・イングラムらが加わり、若さと経験が融合した非常にエキサイティングなチームへと再編されています。

ダルコ・ラヤコビッチ監督の下、2025-26シーズンも東地区の上位争いに加わり、再び頂点を目指す戦いを続けています。

ラプターズの歴史を彩った主な所属選手

ラプターズの歴史を語る上で欠かせない、伝説的な選手たちを紹介します。

ヴィンス・カーター(在籍:1998-2004)

「Air Canada」の異名を持ち、その圧倒的なダンクでチームの知名度を世界的に高めた最大の功労者です。

彼がいなければ、トロントにバスケットボール文化がこれほど根付くことはなかったと言われています。

 

 

カイル・ローリー(在籍:2012-2021)

「グレイテスト・ラプター(史上最高のラプター)」と称される選手です。

スタッツ以上の貢献、執念のテイクチャージ、そしてリーダーシップでチームを初優勝へと導きました。

背番号7は将来的に永久欠番となることが確実視されています。

 

 

デマー・デローザン(在籍:2009-2018)

チームへの揺るぎない忠誠心を示し続け、通算得点などで数々のチーム記録を保持しています。

優勝直前にトレードされましたが、今でもトロントのファンに最も愛されている選手の一人です。

 

 

カワイ・レナード(在籍:2018-2019)

わずか1シーズンの在籍でしたが、その圧倒的な実力でチームを頂点に導きました。

勝負どころでの冷徹なまでの正確さは、ラプターズを「勝てるチーム」へと変貌させました。

パスカル・シアカム(在籍:2016-2024)

下位指名からオールスターまで上り詰めた、ラプターズの育成力の象徴です。

2019年の優勝時にはセカンドオプションとして大活躍し、MIP(最成長選手賞)も受賞しました。

 

 

スコッティ・バーンズ(在籍:2021-)

現在のチームリーダーです。

203cmの長身ながらガードのようなパスセンスと強固なディフェンスを兼ね備え、これからのラプターズを背負って立つフランチャイズ・プレイヤーとして期待されています。

渡邊雄太(2020-2022)

日本人として2人目のNBAプレーヤーであり、ラプターズでその才能を開花させました。

当初はツーウェイ契約(育成枠)でしたが、泥臭いディフェンス、ルーズボールへの執着、そして向上した3ポイントシュートで首脳陣の信頼を勝ち取り、本契約を勝ち取りました。

 

 

ニック・ナースHC(当時)からはそのバスケットIQの高さを絶賛され、地元ファンからも「エナジーをもたらす男」として非常に愛されました。

彼がラプターズで見せた、ハードワークで居場所を勝ち取る姿は、日本のみならず多くのファンに感動を与えました。

 

最後に

トロント・ラプターズは、カナダという地で「異端」から「王者」へと進化を遂げました。

熱狂的なファン(ジュラシック・パークでのパブリックビューイングは有名です)と共に、彼らはこれからもNBAの舞台で独自の存在感を放ち続けることでしょう。

いかがでしょうか。もし、特定の年代や選手についてより詳しく知りたい場合は、さらに掘り下げてお伝えすることも可能です。

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