デトロイドピストンズの歴史と主な所属選手

 

NBAにおいて、デトロイト・ピストンズほど個性的で、ファンの記憶に強く刻まれているチームは珍しいかもしれません。

「バッドボーイズ(不良少年たち)」という愛称に象徴されるように、彼らは華やかなスター軍団を泥臭いディフェンスと不屈の精神で打ち破る、独自のスタイルを築き上げてきました。

ミシガン州デトロイトという労働者の街の気風をそのまま体現したような、ピストンズのこれまでの歩みを振り返ります。

チームの創設と「フォートウェイン」時代

ピストンズの歴史は1941年に遡ります。

当初はインディアナ州フォートウェインを本拠地とし、「フォートウェイン・ゾナー・ピストンズ」という名称で創設されました。

オーナーのフレッド・ゾナーがピストン製造会社を経営していたことが名前の由来です。

1948年にNBAの前身であるBAAに加入し、1957年に現在のデトロイトへと移転しました。

移転当初は思うような成績を残せず、強豪の影に隠れる時期が長く続きましたが、1980年代に入り、チームは劇的な変貌を遂げることになります。

「バッドボーイズ」の黄金時代(1980年代後半〜90年代初頭)

ピストンズの名を世界に知らしめたのが、1980年代後半に登場した「バッドボーイズ」です。

 

 

名将チャック・デイリーのもと、アイザイア・トーマスを中心としたこのチームは、激しいフィジカルコンタクトと執拗なディフェンスを武器に、NBAを席巻しました。

当時、NBAの主役だったマジック・ジョンソン率いるロサンゼルス・レイカーズや、ラリー・バード率いるボストン・セルティックスに対し、ピストンズは「ならず者」のごとく立ちはだかりました。

さらに、若きマイケル・ジョーダンを擁するシカゴ・ブルズに対しては「ジョーダン・ルール」と呼ばれる徹底したマークで苦しめ、大きな壁として君臨しました。

 

 

その結果、1989年と1990年にNBA2連覇を達成。

この時代の成功は、デトロイトという街に「自分たちのチーム」という強いアイデンティティを植え付けました。

 

 

「アンセルフィッシュ」な再興(2000年代半ば)

1990年代の低迷期を経て、2000年代に入るとピストンズは再び黄金期を迎えます。

2004年、絶対的なスーパースターこそ不在だったものの、全員が役割を全うする究極のチームバスケットを展開。

 

 

チャンシー・ビラップス、リチャード・ハミルトン、タイショーン・プリンス、ラシード・ウォレス、ベン・ウォレスの「不動の先発5人」は、当時史上最強と謳われたシャキール・オニールとコービー・ブライアント擁するレイカーズをファイナルで撃破。

下馬評を覆しての優勝は、「チームワークの勝利」として今も語り継がれています。

 

 

低迷と再建への挑戦(2010年代〜)

2000年代後半以降、チームは再び長い再建期に入りました。

プレーオフ進出から遠ざかるシーズンが続き、ドラフト指名権を活用した若手の育成に舵を切っています。

現在は、2021年ドラフト全体1位指名のケイド・カニングハムを中心に、ジェイデン・アイビーやジェイレン・デューレンといった才能豊かな若手が揃っています。

勝てない時期が続いていましたが、かつての「バッドボーイズ」精神を取り戻し、再び東地区の強豪へと返り咲いています。

 

 

ピストンズの歴史を彩った主な所属選手

ピストンズのユニフォームを着て戦った偉大な選手たちを紹介します。

アイザイア・トーマス(Isiah Thomas)

 

「バッドボーイズ」のリーダーであり、ピストンズ史上最高の選手です。

身長185cmと小柄ながら、圧倒的な勝負強さとリーダーシップを誇りました。

1990年のファイナルMVPであり、彼の背番号11は永久欠番となっています。

ジョー・デュマース(Joe Dumars)

 

アイザイアと共に強力なバックコートを形成したガードです。

激しい守備で知られ、マイケル・ジョーダンが「最も守備が上手かった相手」として名を挙げるほどでした。

引退後はGMとしてもチームを支え、2004年の優勝チームを作り上げました。

デニス・ロッドマン(Dennis Rodman)

 

後にブルズでも活躍しますが、彼のキャリアの原点はピストンズにあります。

リバウンドとディフェンスに特化したプレースタイルで、2度の最優秀守備選手賞を受賞しました。

ベン・ウォレス(Ben Wallace)

 

2000年代の守備の要です。

ドラフト外入団というエリートとは無縁の経歴ながら、4度の最優秀守備選手賞に輝きました。

アフロヘアと強靭な肉体でゴール下を死守する姿は、デトロイトの労働者階級のファンから絶大な支持を得ました。

チャンシー・ビラップス(Chauncy Billups)

 

「ミスター・ビッグショット」の異名を持つ冷静沈着なポイントガード。

2004年の優勝時にファイナルMVPを受賞しました。

窮地で必ず決めてくれる信頼感は、当時のピストンズの象徴でした。

ケイド・カニングハム(Cade Cunningham)

 

現在のピストンズの希望です。

高いバスケットボールIQと得点能力を兼ね備えた大型ガードであり、新時代のリーダーとしてチームの再建を託されています。

まとめ

デトロイト・ピストンズの歴史は、決してエリート街道ではありませんでした。

しかし、逆境を跳ね返し、汗を流して勝利を掴み取るその姿勢は、NBAの中でも唯一無二の輝きを放っています。

「DEEE-TROIT BASKETBALL!」というアリーナの叫びが再びプレーオフの舞台で響き渡る日は、もう目の前です。

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