トニ・クーコッチは、208センチの長身にパスセンスとアウトサイドシュートを兼ね備えた左利きのフォワードです。
ヨーロッパで数々のタイトルを獲得したのちシカゴ・ブルズに加わり、マイケル・ジョーダン、スコッティ・ピッペンと共に90年代後期の3連覇を支えました。
ポジションにとらわれない万能さから「ヨーロッパのマジック・ジョンソン」とも呼ばれ、2021年にはバスケットボール殿堂入りを果たしています。
クロアチアでの下積みとブルズからの指名
クロアチア・スプリト出身のクーコッチは、KKスプリト時代にユーゴスラビアリーグを制し、1989年と1990年にはユーロリーグ優勝も経験しました。
1990年のバスケットボール世界選手権では大会MVPに選ばれ、その実力はすでにヨーロッパ屈指と評価されていました。
同年のNBAドラフトでブルズから2巡目全体29位で指名されましたが、契約条件や母国の情勢もあり、すぐには渡米せずイタリアのベネトン・トレヴィーゾでプレーを続けました。
1992年のバルセロナオリンピックではクロアチア代表として決勝でジョーダンやピッペンを擁するドリームチームと対戦し、銀メダルを獲得しました。
ブルズ入団とルーキーシーズン
1993年、ジョーダンが1度目の引退を表明した直後にクーコッチはようやくブルズに合流し、11月5日にNBAデビューを果たしました。
1993-94シーズンはスコッティ・ピッペンやホーレス・グラントの控えとしてスタートしましたが、平均10.9得点、4.0リバウンド、3.4アシストを記録し、オールルーキーセカンドチームに選出されました。
プレーオフではニックスとのカンファレンスセミファイナルで敗退しました。
先発定着とジョーダンの復帰
1994-95シーズンはグラントの退団を受けて先発に定着し、平均15.7得点、5.4リバウンド、4.6アシストとキャリア初のトリプルダブルも記録するなど大きく飛躍しました。
しかしジョーダンがシーズン途中に復帰したこの年、ブルズはオーランド・マジックとのカンファレンスセミファイナルで敗れました。
続く1995-96シーズンにはデニス・ロッドマンが加入し先発の座を譲る形となりましたが、クーコッチはシックスマンとしてチーム3位の得点を記録し、リーグ記録となる72勝を挙げたチームでシックスマン賞を受賞しました。
ファイナルではシアトル・スーパーソニックスを破り、初優勝を経験しています。
後期3連覇とファイナルでの奮闘
1996-97シーズンは怪我の影響で25試合を欠場しながらもユタ・ジャズとのファイナルを制し、連覇を達成しました。
翌1997-98シーズンはピッペンの負傷離脱により開幕からスモールフォワードの主軸となり、74試合中52試合で先発しました。
プレーオフでは全21試合中17試合に出場し、ファイナル第5戦ではブルズの最多となる30得点、6リバウンドを記録して一時的にチームを牽引する場面もありました。
このシリーズもジャズを下し、3年間で3度目の優勝を手にしました。
チームの顔となった1998-99シーズン
ロックアウトで開幕が遅れた1998-99シーズン、ジョーダンが2度目の引退、ピッペンもヒューストンへ移籍したことで、クーコッチはブルズの実質的なエースとなりました。
平均18.8得点、7.0リバウンド、5.3アシストは自己ベストの数字であり、チーム内の得点・リバウンド・アシストはいずれもトップでした。
ただしチームの再建期と重なり、プレーオフ進出は逃しています。
フィラデルフィア、アトランタへの移籍
1999-2000シーズン途中、クーコッチはフィラデルフィア・セブンティシクサーズへトレードされました。
移籍後はシックスマンとしてチームに加わり、シクサーズはファーストラウンドでシャーロット・ホーネッツを破ったものの、カンファレンスセミファイナルでインディアナ・ペイサーズに敗れました。
2000-01シーズン途中にはディケンベ・ムトンボとのトレードによりアトランタ・ホークスへ移り、同シーズン終盤の17試合では平均19.7得点を記録するなど得点力の高さを示しました。
ホークスでは主に先発として起用され、2001-02シーズンも含め2年間プレーしましたが、プレーオフ進出には至りませんでした。
ミルウォーキーでのベテラン期と引退
2002-03シーズンからはミルウォーキー・バックスへ移籍し、控えとしてチームを支えました。
同シーズンのプレーオフではファーストラウンドでニュージャージー・ネッツに敗れたものの、平均14.8得点、2.2スティールとキャリア終盤とは思えない活躍を見せました。
2003-04シーズン以降は出場時間、スタッツともに徐々に減少し、2005-06シーズンを最後にコートを去りました。
自宅のあるイリノイ州ハイランドパーク近郊のバックスかブルズとの契約を望んだものの実現せず、2006年9月12日に現役引退を発表しました。
殿堂入りとその後
クーコッチは現役引退後、シカゴ・ブルズのオーナーであるジェリー・ラインスドルフの相談役を務めています。
2017年にFIBA殿堂、2021年にはネイズミス・バスケットボール殿堂入りを果たし、式典ではジョーダンやピッペンへの感謝を語りました。
オールスターゲームへの出場経験がないまま殿堂入りしたのは、事故で亡くなったドラゼン・ペトロヴィッチに次いで2人目です。
2023年にはブルズの「リング・オブ・オナー」の第一期メンバーにも選ばれています。
プレイスタイル
クーコッチは208センチの長身ながら、ポジションにとらわれずスモールフォワードからパワーフォワード、時にはセンターやシューティングガードまでこなしました。
最大の武器はパスセンスで、高いバスケットボールIQを生かしてブルズのトライアングルオフェンスに順応し、味方を生かすプレーを得意としていました。
左利きから放つミドルレンジやアウトサイドのシュートも安定しており、フリースロー成功率は通算72.9パーセントを記録しています。
一方でフィジカルの強さは目立たず、体格の勝るインサイドプレイヤーとのマッチアップでは苦戦する場面も見られました。
キャリア後期は出場時間が減る中でも、スリーポイントの比重を高めながらロールプレーヤーとしてチームに貢献し続けました。
キャリアスタッツ
レギュラーシーズン
| シーズン | 年齢 | チーム | 出場試合 | 出場時間 | 得点 | リバウンド | アシスト | FG% | 3PT% | FT% | スティール | ブロック | TO |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 93-94 | 25 | CHI | 75 | 24.1 | 10.9 | 4.0 | 3.4 | .431 | .271 | .743 | 1.1 | 0.4 | 2.2 |
| 94-95 | 26 | CHI | 81 | 31.9 | 15.7 | 5.4 | 4.6 | .504 | .313 | .748 | 1.3 | 0.2 | 2.0 |
| 95-96 | 27 | CHI | 81 | 26.0 | 13.1 | 4.0 | 3.5 | .490 | .403 | .772 | 0.8 | 0.3 | 1.4 |
| 96-97 | 28 | CHI | 57 | 28.2 | 13.2 | 4.6 | 4.5 | .471 | .331 | .770 | 1.1 | 0.5 | 1.6 |
| 97-98 | 29 | CHI | 74 | 30.2 | 13.3 | 4.4 | 4.2 | .455 | .362 | .708 | 1.0 | 0.5 | 2.1 |
| 98-99 | 30 | CHI | 44 | 37.6 | 18.8 | 7.0 | 5.3 | .420 | .285 | .740 | 1.1 | 0.3 | 2.8 |
| 99-00 | 31 | CHI | 24 | 36.2 | 18.0 | 5.4 | 5.2 | .381 | .231 | .761 | 1.8 | 0.8 | 3.1 |
| 99-00 | 31 | PHI | 32 | 28.6 | 12.4 | 4.5 | 4.4 | .438 | .289 | .673 | 1.0 | 0.3 | 2.2 |
| 00-01 | 32 | PHI | 48 | 20.4 | 8.0 | 3.4 | 1.9 | .458 | .410 | .591 | 0.7 | 0.1 | 1.3 |
| 00-01 | 32 | ATL | 17 | 36.4 | 19.7 | 5.7 | 6.2 | .492 | .481 | .681 | 0.8 | 0.3 | 3.0 |
| 01-02 | 33 | ATL | 59 | 25.3 | 9.9 | 3.7 | 3.6 | .419 | .310 | .712 | 0.8 | 0.3 | 1.9 |
| 02-03 | 34 | MIL | 63 | 27.0 | 11.6 | 4.2 | 3.7 | .432 | .361 | .706 | 1.3 | 0.5 | 1.9 |
| 03-04 | 35 | MIL | 73 | 20.8 | 8.4 | 3.7 | 2.7 | .417 | .292 | .729 | 0.8 | 0.3 | 1.5 |
| 04-05 | 36 | MIL | 53 | 20.7 | 5.6 | 3.0 | 3.0 | .410 | .362 | .721 | 0.7 | 0.2 | 1.2 |
| 05-06 | 37 | MIL | 65 | 15.7 | 4.9 | 2.3 | 2.1 | .389 | .306 | .714 | 0.5 | 0.3 | 1.0 |
プレイオフ
| シーズン | 年齢 | チーム | 出場試合 | 出場時間 | 得点 | リバウンド | アシスト | FG% | 3PT% | FT% | スティール | ブロック | TO |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 93-94 | 25 | CHI | 10 | 19.4 | 9.3 | 4.0 | 3.6 | .448 | .421 | .735 | 0.5 | 0.3 | 1.7 |
| 94-95 | 26 | CHI | 10 | 37.2 | 13.8 | 6.8 | 5.7 | .477 | .438 | .692 | 1.0 | 0.2 | 1.9 |
| 95-96 | 27 | CHI | 15 | 29.3 | 10.8 | 4.2 | 3.9 | .391 | .191 | .838 | 0.9 | 0.3 | 1.7 |
| 96-97 | 28 | CHI | 19 | 22.3 | 7.9 | 2.8 | 2.8 | .360 | .358 | .707 | 0.7 | 0.2 | 0.9 |
| 97-98 | 29 | CHI | 21 | 30.3 | 13.1 | 3.9 | 2.9 | .486 | .377 | .645 | 1.2 | 0.5 | 1.3 |
| 99-00 | 31 | PHI | 10 | 25.7 | 9.3 | 3.7 | 1.7 | .387 | .324 | .588 | 1.0 | 0.3 | 1.5 |
| 02-03 | 34 | MIL | 6 | 30.7 | 14.8 | 4.2 | 3.7 | .492 | .379 | .700 | 2.2 | 0.2 | 1.8 |
| 03-04 | 35 | MIL | 5 | 21.0 | 8.4 | 2.8 | 0.8 | .500 | .333 | .500 | 0.6 | 0.4 | 1.2 |
| 05-06 | 37 | MIL | 3 | 17.7 | 7.3 | 1.7 | 3.0 | .571 | .625 | .500 | 0.3 | 0.0 | 1.0 |
プロフィール
- 生年月日:1968年9月18日 57歳
- 身長:208cm
- 体重:87kg
- 国籍:クロアチア




















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