NBA(ナショナル・バスケットボール・アソシエーション)において、最も古く、そして最もドラマチックな変遷を遂げてきたチームの一つがサクラメント・キングスです。
創設から100年近い歴史を持ち、数々の都市を渡り歩きながら、独自のバスケットボール文化を築き上げてきました。
近年では、16シーズンに及ぶプレーオフ未進出という「北米スポーツ史上最長の不名誉な記録」を打ち破り、紫色の光線(ビーム)を夜空に放つ「ライト・ザ・ビーム」の合言葉とともに、再びリーグの強豪へと返り咲きました。
本記事では、キングスの誕生から、2000年代初頭の黄金時代、苦難の低迷期、そして現代の躍進まで、その波乱万丈な歴史と歴代の名選手たちについて詳しく解説します。
黎明期と唯一の頂点:ロチェスターからシンシナティへ
サクラメント・キングスのルーツは非常に古く、1923年にニューヨーク州ロチェスターで創設されたセミプロチーム「ロチェスター・セアグラムス」にまで遡ります。
1945年に「ロチェスター・ロイヤルズ」としてプロ化し、NBAの前身であるNBLやBAAで活動を開始しました。
この時代のハイライトは、1951年のNBA制覇です。
殿堂入り選手であるボブ・デイヴィスやアーニー・ライゼンを擁したロイヤルズは、ファイナルでニューヨーク・ニックスを破り、フランチャイズ史上唯一となるチャンピオンシップを獲得しました。
その後、チームは1957年にオハイオ州シンシナティへ移転し、「シンシナティ・ロイヤルズ」となります。
ここで登場したのが、NBA史上屈指の万能選手オスカー・ロバートソンです。
彼は1961-62シーズンに、当時としては前人未到の「シーズン平均トリプルダブル」を達成し、チームを牽引しました。
「キングス」の誕生:カンザスシティ時代
1972年、チームは再び移転を決断し、ミズーリ州カンザスシティとネブラスカ州オマハを本拠地とする「カンザスシティ=オマハ・キングス」に改称しました(後にカンザスシティのみを本拠地とします)。
「ロイヤルズ」から「キングス」へ名前を変えたのは、当時カンザスシティに同名のプロ野球チーム(ロイヤルズ)が存在したためです。
この時代のスターは、小柄ながら爆発的な得点力を誇ったネイト・“タイニー”・アーチボルドでした。
彼は1972-73シーズンに、NBA史上唯一となる「同一シーズンでの得点王とアシスト王の同時受賞」という偉業を成し遂げました。
サクラメントへの移転と「ザ・ロック」の奮闘
1985年、チームは現在の本拠地であるカリフォルニア州サクラメントへと移住します。
移転当初は成績が伸び悩み、長らく低迷期が続きました。
そんな暗黒時代の中で唯一の光となったのが、1991年に加入したミッチ・リッチモンドです。「ザ・ロック(岩)」の異名を持ち、堅実なディフェンスと圧倒的なシュート力を備えた彼は、7年連続でオールスターに選出されるなど、孤軍奮闘を続けました。
彼の背番号「2」は、現在キングスの永久欠番となっています。
黄金時代:「グレイテスト・ショー・オン・コート」
1990年代後半、キングスに革命が起きます。名将リック・アデルマン監督の就任と、クリス・ウェバー、ブラデ・ディバッツ、ジェイソン・ウィリアムス(後にマイク・ビビーと交代)、ペジャ・ストヤコヴィッチといった多才な選手たちの集結です。
彼らが展開した、センターを含めた全員がパスを回し、常にボールと人が動く華麗なスタイルは「グレイテスト・ショー・オン・コート(コート上最高のショー)」と称賛されました。
2001-02シーズンにはリーグ最高勝率(61勝21敗)を記録。
西カンファレンス決勝で宿敵ロサンゼルス・レイカーズと激突したシリーズは、今なおNBA史上最高の激闘の一つとして語り継がれています。
16年の沈黙と「ライト・ザ・ビーム」による復活
黄金時代の終焉後、チームは2006年から2022年まで、16シーズン連続でプレーオフを逃すという長いトンネルに入りました。
デマーカス・カズンズやアイザイア・トーマスといった才能ある選手を擁した時期もありましたが、フロントの混乱や監督交代が重なり、勝利には結びつきませんでした。
しかし、2022年に就任したマイク・ブラウン監督のもと、チームは劇的な変貌を遂げます。
爆速のガード、ディアロン・フォックスと、万能センターのドマンタス・サボニスを中心とした超高速オフェンスを構築。
2022-23シーズンには17年ぶりのプレーオフ進出を果たし、勝利のたびにアリーナの屋根から紫のレーザー光線を放つ儀式「ライト・ザ・ビーム」は全米を席巻する社会現象となりました。
主な歴代所属選手(レジェンドと現役選手)
オスカー・ロバートソン (Oscar Robertson)
「ビッグ・オー」の愛称で知られる元祖万能選手。
キングス史上最高の選手の一人であり、その記録は今も色褪せません。
クリス・ウェバー (Chris Webber)
2000年代黄金期の象徴。
パス能力に長けたパワーフォワードで、サクラメントにバスケットボール熱狂を呼び込みました。
ミッチ・リッチモンド (Mitch Richmond)
暗黒時代を支えたリーグ屈指のシューティングガード。
ドリームチームⅡのメンバーでもあり、その安定感は群を抜いていました。
ネイト・アーチボルド (Nate Archibald)
小柄な選手の希望の星。
スピードとテクニックで大男たちを翻弄した伝説の司令塔です。
ディアロン・フォックス (De’Aaron Fox)
再び競合に押し上げた立役者。
リーグ最速とも言われるスピードを武器に、クラッチタイム(試合終盤)での強さは現役トップクラスです。
ドマンタス・サボニス (Domantas Sabonis)
リバウンドとアシストでチームの心臓を担う万能センター。
彼の加入がキングス復活の最大の鍵となりました。
最後に
サクラメント・キングスの歴史は、忍耐と情熱の歴史です。
地方都市であるサクラメントにありながら、ファン(キングス・ネーション)の忠誠心はリーグで最も高いと言われています。
長く苦しい時代を経て、2020年代に再び光を掴み取ったこのチームは、現在デマー・デローザンやザック・ラビーンといった実力者を加え、悲願の2度目の優勝を目指して走り続けています。






















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