メンフィス・グリズリーズ(Memphis Grizzlies)は、テネシー州メンフィスを拠点とする、NBAで最も個性的かつタフなアイデンティティを持つチームの一つです。
もともとはカナダのバンクーバーで産声を上げましたが、メンフィスへの移転後に「グリット&グラインド(Grit ‘n’ Grind=泥臭く、粘り強く戦う)」という独自の文化を確立し、全米のバスケットボールファンから深い敬意を集めるようになりました。
本記事では、バンクーバーでの苦難の創設期から、メンフィスに根付いた黄金時代、そしてジャ・モラントという新星を中心とした現代(2026年)の戦いまで、その歴史と主要選手について詳しく解説します。
カナダでの誕生:バンクーバー・グリズリーズ時代
グリズリーズの歴史は1995年、NBAのカナダ拡大の一環としてバンクーバーで始まりました。トロント・ラプターズと同時に参入したものの、初期の数年間は非常に厳しい戦いを強いられました。
当時の中心選手は、高い得点能力を誇ったフォワードのシャリーフ・アブドゥル=ラヒームでしたが、チームは6シーズンのうち一度も25勝を超えることができず、観客動員も低迷しました。
しかし、この時期に醸成された「不屈の精神」は、後のチームのDNAへと繋がっていくことになります。
2001年、チームは再起をかけてアメリカ南部の都市、メンフィスへと移転しました。
メンフィスへの移転とパウ・ガソルの登場
2001年、メンフィス・グリズリーズとしての新たな歩みが始まると同時に、ドラフトで獲得したスペイン出身のパウ・ガソルがチームの顔となりました。
ガソルは移転初年度に新人王を獲得し、グリズリーズを史上初めてのプレーオフ進出(2004年〜2006年)へと導きました。
名将ジェリー・ウエストをフロントに迎え、チームは着実に力をつけましたが、プレーオフでは1勝も挙げられずに敗退する時期が続きました。
2008年、ガソルがレイカーズへトレードされるという大きな転換点を迎えましたが、このトレードで獲得した弟のマーク・ガソルが、後の「王朝」の礎となります。
「グリット&グラインド(Grit ‘n’ Grind)」の黄金時代
2010年代、グリズリーズはNBA史上でも稀に見る強力なチームアイデンティティを確立しました。
それが「グリット&グラインド」です。
華やかな3ポイントシュートやダンクが主流になりつつあったリーグにおいて、グリズリーズは強固なディフェンスとフィジカルなプレーで相手をねじ伏せるスタイルを貫きました。
この時代を支えたのは、「コア・フォー(Core Four)」と呼ばれる4人、ザック・ランドルフ、マーク・ガソル、マイク・コンリー、トニー・アレンでした。
2011年には、第8シードながら第1シードのスパーズを破るという「ジャイアント・キリング」を達成。
2013年には球団史上初となるカンファレンス・ファイナル進出を果たしました。
彼らの献身的なプレースタイルは、ブルーカラーの街メンフィスの誇りとなり、チームとファンは家族のような強い絆で結ばれました。
ジャ・モラントと次世代の飛躍
2019年、ドラフト2位で指名されたジャ・モラントの加入により、チームは「泥臭さ」に「華やかさ」を融合させた新たな時代へと突入しました。
モラントの驚異的な身体能力から繰り出されるダンクとパスは、NBA全体を熱狂させました。
モラントに加え、守備の要であるジャレン・ジャクソンJr.、そしてデスモンド・ベイン(2025年に移籍)といった若手たちが急速に成長し、チームは再びウェスタン・カンファレンスのトップ争いに加わるようになります。
2021-22シーズンには球団記録に並ぶ56勝を挙げ、ディビジョン優勝も果たしました。
若く、不遜で、勢いのあるこのチームは、「ネクスト・ジェネレーション」の象徴となりました。
現在(2026年):逆境を乗り越えた「新生グリズリーズ」
2024-25シーズン、グリズリーズは主力選手の相次ぐ怪我により苦しい再建期を経験しました。
しかし、2026年現在、怪我から復帰したジャ・モラントを中心に、チームは再びプレーオフ戦線へと戻ってきています。
現在のチームは、モラントとジャレン・ジャクソンJr.を核としつつ、ベテランのケンテイビアス・コールドウェル=ポープや、2024年ドラフトで加入した超大型センター、ザック・イディーなど、新たなピースが融合しています。
かつての「グリット&グラインド」の精神を受け継ぎながらも、現代的なスピードとサイズを兼ね備えた布陣で、悲願の初優勝を目指してメンフィスの地で戦い続けています。
主な歴代・現役所属選手プロフィール
ジャ・モラント(Ja Morant)
在籍期間: 2019–
実績: 新人王(2020年)、MIP(2022年)、オールNBAチーム選出
特徴: 圧倒的なスピードとジャンプ力を誇る、現代の「空飛ぶ司令塔」。
チームの顔として、攻撃的なスタイルでグリズリーズを牽引しています。
マーク・ガソル(Marc Gasol)
在籍期間: 2008–2019
実績: 最優秀守備選手賞(DPOY/2013年)、3度のオールスター、永久欠番33
特徴: 兄パウに負けないスキルと、それ以上の守備力・パスセンスを兼ね備えた「知性派センター」。
グリズリーズの精神的支柱でした。
マイク・コンリー(Mike Conley)
在籍期間: 2007–2019
実績: チーム歴代最多得点・アシスト・スティール記録保持者、永久欠番11
特徴: 「静かなるリーダー」。
攻守に隙がなく、常に冷静な判断でチームをコントロールした、史上最高のグリズリーズ・ポイントガードです。
ザック・ランドルフ(Zach Randolph)
在籍期間: 2009–2017
実績: 永久欠番50
特徴: 「Z-Bo」の愛称で親しまれた、インサイドの支配者。
荒々しくも献身的なプレーで、メンフィスの街に「グリット&グラインド」の文化を根付かせました。
ジャレン・ジャクソンJr.(Jaren Jackson Jr.)
在籍期間: 2018–
実績: 最優秀守備選手賞(2023年)、ブロック王2回
特徴: 現代的な「ストレッチ・ビッグ」。
驚異的なブロック能力と3ポイントシュートを兼ね備え、今のグリズリーズの守備の核となっています。
トニー・アレン(Tony Allen)
在籍期間: 2010–2017
実績: 永久欠番9、オールディフェンシブ1stチーム選出多数
特徴: 「グラインドファーザー」。
リーグ屈指のペリメーター・ディフェンダーであり、彼の放った「Grit, Grind」という言葉がチームの合言葉となりました。
日本からも渡邊雄太選手と河村勇輝選手が所属しました。
最後に
メンフィス・グリズリーズの歴史は、決して平坦なものではありませんでした。
しかし、バンクーバーでの挫折からメンフィスでの栄光、そして現在の若き挑戦に至るまで、常に「自分たちのスタイル」を崩さずに戦い続けてきました。
スター選手の華やかさ以上に、チームのために汗を流す「ハードワーク」が称賛されるこの場所で、グリズリーズはこれからも独自の道を歩み、NBAに確固たる足跡を残していくでしょう。






















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